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家族の絆で生まれる新名物「農家のお肉屋さん 丸福」
2021.03.15
 都農町の畜産業にとって忘れられない出来事があります。2010年に発生した口蹄疫で被害を受けた家畜は29万7,808頭に上り、宮崎県の畜産業に甚大な被害をもたらしました。都農町も例外ではなく牛や豚など1万6641頭の家畜が殺処分されました。今回はそんな辛い時代を経験しながらも、都農町の畜産の第一線を走る「農家のお肉屋さん 丸福」の塩月美智子さん、隆平さん親子にお話を聞きました。
祖父の背中を見て畜産の道へ
 はじめに母牛の牛舎に案内していただきました。「農家のお肉屋さん 丸福」を経営する有限会社ビッグファームでは母牛の飼育・出産介助、子牛から成牛までの肥育、そして精肉まで一貫した事業を行なっています。畜産部門では母牛だけでも約500頭、子牛は約250頭飼育されており、児湯地区のなかでもかなり大きな規模だそう。最近建ったばかりだという新しい牛舎では20頭ほどの母牛がいました。通常の肉牛と比べて体が大きく、乳房のあたりが張っている牛が多く見られます。この乳房の張りが大きくなるほど出産が間近なサインだといいます。
 この牛舎を任されているのは塩月隆平さん。畜産の道を志したのはおじいさんをはじめとした家族の影響があったそう。
「母の実家で牛を飼育していて祖父が世話をしていたのをそばでずっと見ていました。その影響からか牛が好きだという気持ちが大きくなって、職業にしたいと思うようになりました。10代のころに熊本の大きい畜産農家さんで2年間修行したあと都農に帰ってきたので、今年で4年目になります」。
 小学生のときに種牛の掛け合わせを覚えはじめ、数年前に母牛に人工的に受精させるための「家畜人工授精師」の資格を取りました。種牛と母牛の掛け合わせを覚えるのはとても大切で、間違えてしまうと体が弱い子牛が生まれてしまう危険性があり、過去に心不全で亡くなってしまった牛もいたそう。自分の手で母牛に受精させたり出産の手助けをしたりすることも多く、幼いころから牛への知識や理解を深めてきました。日に日に出産に向けて体調が変化する母牛は、餌やりや掃除のときによく観察して小さな変化も見逃さないことを心がけています。牛たちに向けられる眼差しは、真剣そのものでした。
口蹄疫を乗り越え「都農らしさ」を模索した7年間
 次に有限会社ビッグファームの取締役として活躍されている塩月美智子さんに「農家のお肉屋さん 丸福」の店内を案内していただきました。口蹄疫が流行した当時、飼育していた牛が殺処分になり大きな被害を受けました。苦しい時期を乗り越えて店を開くきっかけになったのは1頭の子牛の存在でした。
「子牛があるとき骨折したんですよ。それだと競りには出せないので肥育して食べてみようとなったんです。当時の従業員にも食べてもらうと、それがすごくおいしくて評判が良かったんですよ。それで自分で育てた牛をお客様に届けたい!と思ってお店を開くことにしました」。
店を開くにあたり、せっかくなら「都農らしさ」があるメインの商品をつくりたい。そう決心して生まれたのが「ワイン牛(ぎゅう)」でした。
新しい都農の名物をつくりたい
丸福では乳酸菌や酵母等、約20種類の発酵菌を与え、仕上げに出荷の2〜3ヶ月前の成牛にワインを含んだ飼料を与えています。そのあいだに肉質が柔らかくなり牛肉の旨味が引き出されます。ワイン牛の赤身には臭みが少なく、酵素をたっぷり含んでいるため健康にも良いと丸福のお客さんにも評判です。今やふるさと納税の贈答品にも選ばれ、多くのお客さんに愛される人気商品になっています。
店内に並ぶ肉はすべて人の手で切っている
 丸福のワイン牛は長い経験で培われた畜産のノウハウと、新しい生産方法に挑戦し試行錯誤した努力の結晶です。美智子さんは新しい都農の名物としてワイン牛に可能性を感じるといいます。
「これからは息子の隆平が中心になって、ワイン牛を広めてほしいですね。最初から最後まで手塩にかけたお肉をぜひみなさんに味わってほしいです」。
こうして丸福は若い世代も参加して活躍の場を広げていきます。都農の新たな名物が有名になる日が待ち遠しいですね。
[DATA]
【農家のお肉屋さん 丸福】
〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町 大字川北22978−4
電話: 0983-32-9866
営業時間:午前10:00〜午後6:00
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