#暮らしのこと
暮らしてみたい場所がここにあった。都農町
2023.12.15
人は旅を求めるもの。知らない土地へ行き、その土地の人と出会い、その土地の食べ物を食べる。見知ったものではないからこそ、その一つ一つは記憶に残っていく。旅先での体験や暮らしが格別のものであれば、それは人の人生を大きく動かすほどの力を持つ。自分でも予期せぬ方向へと導かれる。旅もいつかは区切りがつくもの。この地で暮らし、どんな物語を紡いでいくのだろう。
気持ちが優しい人のいるところで暮らしたい
「日本のなかで思い入れの強いまちにはじめて出会いました」

2023年の7月に都農町地域おこし協力隊として赴任した入江庸子さん。庸子さんは千葉県で生まれ、5歳から東京で育ちました。旅が好きなこともあり、40カ国および、日本各地を巡り、ワーキングホリデーでカナダ、アメリカに滞在するなど多くの土地を訪れています。大学卒業後は旅行会社で勤務していました。
ナイアガラの滝を背景に|写真提供:入江庸子
フロリダ勤務のころ|写真提供:入江庸子
庸子さんと都農町との出会い、それは不思議なものでした。
独身で40歳を迎えたこともあり2023年は毎月どこかの土地へ生活体験を兼ねた旅行を計画していたといいます。その一つ目に選んだのがたまたま都農町でした。

宮崎ブーゲンビリア空港からJR都農駅まで電車で直通1時間。さらには宿泊地であるホステルALAまで都農駅から徒歩約6分、就農体験先までも自転車で20分ほど。公共交通機関の便の良さ、運転が苦手な庸子さんにとって自転車で回ることのできるまち、はじめて暮らす体験をするには好条件でした。

2023年2月、宮崎、そして都農町を初来訪。同じく体験で訪れた大学生と2人、スイートピー農園「Garden Works」で働きながら都農町の暮らしを堪能。あくまで「旅」の一環で訪れ、移住願望はまったくなかったはずが、日に日にここで暮らすことができたら心地が良さそうという気持ちが募ってきたといいます。
就農受け入れ先の細野啓志郎さんたちと一緒に|写真提供:(一社)ツノスポーツコミッション
「空が近く山があって高台から海が見えて川が流れている。好きなハワイのような景色に魅了されました。都農の人の人柄や温かさ。海外で体験したような、よそものの私にもフランクに話しかけてくれるその心の壁のなさが心地良くて。帰る日にもお世話になった細野啓志郎さん、古部祐子さんが駅まで来てくれて、ホームまで見送ってくださり感動しました。空港へ向かう電車の中では“また来たい”ではなく“都農町へ戻りたい”と感じている自分がいました」
構えたり、偽りの自分をつくる必要がない
庸子さんは「なんでもベスト・オブ・ベストを探したいタイプ」と話すように、自分にとって良きものを実際に自分の目で確かめたい性格。それはおいしいお店から暮らしたい土地まで、日常のあらゆる選択肢に及んでいるといいます。しかし、はじめての都農町で「ここがベストの土地になるかもしれない」という気持ちになったのは、本人も戸惑いつつ嬉しいようです。

「よく運命の相手と出会ったときに『ビビビ! ときた』といういい方をしますよね? その感覚が都農という土地に起きたんです。ここにいると風が吹くというか、物事が良い方向に進む気がしてきて私にとって土地との相性の良さを感じています」

自治会や地区の行事など、都農のまちでごく当たり前に行われてきたことが、マンション暮らしが長い庸子さんにとっては新鮮なものに感じる。地区の人々は温かく優しい。そんななかで生活しているとストレスから解放され自然体でいられ、構えたり、自分を偽ったりする必要がない。
「長年東京で暮らしていた私には田舎がありませんでした。大学の同級生や就職で上京する方々を見ていて戻る場所、故郷があるって羨ましいなと思っていました。それに近いような場所が私にもできたことはすごく嬉しい。

よく移住者という立場で『都農町に足りないものは何だと思いますか?』と質問を受けることがありますが、私からすると何でもあるのに! というのが本音です。人も温かい、食べるものに恵まれている、主要な場所が集まっていて過ごしやすい。たくさんの魅力が詰まった場所と思います」
都農の人々の人柄はかけがえのない財産
地域おこし協力隊として日々活動している庸子さん。最近は地場の余った食材を使って町の特産品や料理を開発できないかと模索中。

庸子さんは「整理収納アドバイザー」の一面も持つように、物事を整理するだけでなく、あるものを必要としている人へマッチングすることを行っていきたいと考えています。誰かにとって余剰となったものを、欲している人へとつなぐ。資源やエネルギーを使い一から新しいものを生み出すのではなく、今あるものを有効活用することに目を向けていきたい。

試みとして、ツノスポーツアカデミーの寮で暮らす高校生たちに生産者さんからいただいた食材を使った食事を提供。ゆくゆくは寮生たちに提供した食事をアカデミー以外でも食べていただける場ができたらいいなと構想を語っていました。
移り住んで1年目。いろんな土地を巡った経験、また移住者の1人として、暮らし続けるには大切な点があることに気づいたといいます。

「移住は一人の力で叶うけれど、定住は自分の意思だけではままならない。土地との相性もありますが、自分が努力をしたうえで周りも町も行政も受け入れてくれる雰囲気になければ住み続けることは難しい。私はというと、ありがたいことに都農町に来させていただいてから、よくしていただくことばかり。手を取って『都農町に来てくれて、ありがとう』といってくださる方々もいます。

こちらのほうが『温かく接してくださりありがとうございます』という気持ちです。都農町の方々はまちを愛し自分と周囲の人を大切に想えるからこそ、新たにまちに来た人にも同じように接することができる。この自然体な人柄、温かさは唯一無二、とても貴重なことだと感じています。住んでいる人が、大切に想えるまちが放つパワーのようなものは何にも代えることができない財産ではないでしょうか」

「町内で訪れたい場所、会いたい人がまだまだいっぱいいるんです」。そう話す庸子さんの都農町暮らしは序章も途中。これからどんな物語が刻まれていくのでしょうか。
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