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100年続くプリン屋を目指して。飛び込み出会った“南国”の魅力
2023.10.18
宮崎県の名物やお土産品として思い浮かぶもの。地鶏、チキン南蛮、マンゴー、チーズ饅頭、青島せんべい、焼酎などなど。そんななかで最近ちまたを賑わせている宮崎発のプリンがあります。可愛い見た目に独特の風味。一度口にすると頬が緩み、笑みが浮かぶ。そんなおいしいプリンをつくっている会社が都農町にはあるんです。
宮崎発の新名物。南国風味の詰まった滑らかプリン
画像提供:(株)南国CBF
トロッとした食感、濃厚な味わいに潜む優しいフレーバー。プリンの上には色鮮やかなジュレ。青、黄色、黄緑色など素材によって色が異なり、ついつい買い揃えて並べたくなってしまう。

その名は宮崎の新名物「南国プリン」。素材にはとことんこだわり、主原料である牛乳は宮崎県新富町の松浦牧場の低温殺菌ノンホモ牛乳を使っています。低温殺菌ノンホモ牛乳は「九州生乳販連 生乳品質共励会 優秀賞」を2020年〜2022年の3年連続で受賞しているほどの高品質。

卵は洋菓子用に育てられたものを使い、フレーバーに欠かせないバニラビーンズは天然もの。季節限定のプリンの上には地元産の季節の果物が乗っていたりと、食べることを通じて四季を感じられるのも魅力の一つとなっています。
9月取材時、都農研究所では季節限定商品「尾鈴ぶどうプリン」、宮崎市内の恋史郎コーヒーとコラボした「コーヒープリン」、とろける食感が癖になる「テゲセボン」が並んでいた
本当においしいものはお客さんを通じて自然と広がっていくもの。南国プリンはその誕生から徐々に話題を呼び、メディアでの紹介やSNSの“バズり”を経て人気商品となっています。オンラインショップでは1日4,000個以上を売り上げたことも。

都農町役場のお隣にある南国プリン都農研究所を本拠地に、日々おいしいプリンの開発が行われています。実店舗は都農研究所のほか宮崎市の中心街にもあり、ともにマスコットキャラクター「バニラちゃん」がお出迎え。地元の人から観光客まで幅広い客層が訪れています。
都農と自分を結びつけた夏大祭のお神輿
南国プリンを手がけているのは株式会社南国CBF。南国CBFは地域食材のブランディングを主事業とした会社で、これまで「プレミアムポーク 尾鈴豚」や濃厚プレミアムジュース「COLLECT BEAUTIFUL FOOD」など、都農町・尾鈴地域産品による商品企画・販売を行なってきました。

代表を務めるのは河野当将(たいすけ)さん。当将さんの生まれは宮崎県都城市ですが、父の仕事の都合、幼少時からさまざまな地域で暮らしています。神奈川県から福島県、そして高校2年生で宮崎県川南町へ。都農町とのご縁は都農高校へ通い出したところからはじまります。
「転勤族だったので僕には『地元』がありませんでした。ですので、高校2年生でやってきて友人がいるわけでもなく寂しかったんです。それが都農神社の夏大祭でお神輿を担いだことをきっかけに、僕のことを認めてくれて仲良くなる人が増えまして。そのローカルな感じが新鮮で嬉しかった。そこから夏大祭にどハマりして20年ほどお神輿を担ぎましたね」

高校卒業後は大学進学のため宮崎市へ移りますが、夏大祭のたびに都農町へ帰っていました。ただ、そのたびに目に入るのは閉まった商店街のシャッター。友人たちと花火をするために立ち寄った思い出のお店はすでに閉店。まちから馴染みのお店がなくなっていく寂しさは「とんでもなかった」といいます。
2010年には宮崎県全体が大きな影響を受けた口蹄疫が発生。農畜産を主産業とする都農町は大打撃を受けました。さらに元気のなくなるまちを見て、都農町を盛り上げる仕事をしたいと決意した当将さん。当時、町内で営んでいたバーを閉じ、南国CBFの前身となるフルーツ&ベジカフェ「NANGOKU」を創業。地域食材のPRやプロデュースに勤しむようになるのでした。
100年続くプリン屋を目指す。そのために今できることとは
販売車を導入し、キャンベル・アーリーの生搾りジュースや尾鈴豚のホットドッグの移動販売を行なったり、興隆前のふるさと納税へ加工品を出品したり、試みを一つずつ積み重ねていきました。結果として業績が大きく伸び、従業員も増えたことで2016年に法人化。

実店舗やネットショプを通じた地元食材のPRにさらに力を注ごうとした矢先、新型コロナ感染症の脅威、ふるさと納税の停止など危機が訪れました。経営判断として撤退せざるを得なかった事業もありましたが、すでに看板商品となっていた南国プリンに注力する方向へシフト。全国各地で開かれる催事に出店し、代表である当将さん自ら店頭に立ち、南国プリンを売り込むなど多忙な日々を送っています。

「世の流れには敏感ですね。僕は流れのなかで目の前の課題を一つずつ解決していくタイプ。それに加えて、道を切り開いたり、はじめてのことに飛び込んだりするのが得意なほうといいますか。そこは自分の役割だと思っています」
大きなビジョンを提示し、人々を導いていく経営者もいますが、自分はそういうタイプではないという当将さん。しかし、最近は考え方が変わり、とくに広く愛される南国プリンを残していきたいという想いが強くなったといいます。

「『100年続くプリン屋さんをやっていくために動く』というのが会社内での共通言語になりつつあります。僕らがこの世からいなくなったあとも続くプリン屋さんを目指すには今何をすべきなのだろうと。会社のみんなが想いを共有し、前を向くためのキーワードが必要だなと最近は言語化に頭を悩ませていますね(笑)」
これまで書き留めてきた研究ノート。ページは当将さんの言葉でびっしりと埋め尽くされている
商品がおいしいことはもちろん、人へ届けていくため、未来へ残していくための工夫を欠かさない。都農町を元気にしたいという当将さんの熱意から生まれた事業、そして南国プリン。今はまだ100年のうちのはじまりの一歩。出発点に立った当将さんと南国プリンの今後の歩みはどうなっていくのでしょうか。
【株式会社南国CBF】
〒889-1201 
宮崎県児湯郡都農町川北4858-2
TEL:0983-25-1686
【南国プリン都農研究所】
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町川北4858-2
TEL:050-8883-8666
営業時間: 9:30~18:00(不定休)
Instagram:@nangokupurin.tsuno

【南国プリン(宮崎市橘通)】
〒880-0805
宮崎県宮崎市橘通東3丁目2-10
TEL:0985-22-5668
営業時間:10:00~22:00(不定休)
2階イートインスペースあり
Instagram:@nangoku.purin
※各店の最新情報はSNSをご覧ください
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