#耕す
就農者インタビュー:ブドウも農業も、工夫の先に伝わる魅力がある
2022.11.11
河野裕介さん(34)都農町出身
シャインマスカットを主力に、さまざまなブドウを生産するKAWANO農園。7月から9月にかけ、ブドウのシーズン中は自宅前の直売所が賑わっています。兄が農園の三代目を継ぎ、自身は現在広報を担当する河野裕介さんは18歳で都農町を出て、2020年11月に約15年ぶりに帰ってきました。それ以来ブドウ農家として家族と一緒に仕事に励んでいます。
ーーKAWANO農園で就農する前は、どのような仕事をされていたのですか
 高校卒業のタイミングで半導体メーカーに就職しました。デジタルカメラのイメージセンサーの製造に携わっていましたね。鹿児島で11年働いて、その後転勤で熊本に3年9ヶ月いました。自分は知らない土地での生活が苦ではないので、鹿児島も熊本も楽しんではいましたね。
ーーその後、都農町へUターンすることになりますが、どういう経緯があったのでしょう
 前職は人間関係も悪くなく、それなりにやりがいもありました。ただ、心のどこかで「この仕事いつまで続くのかな」という思いもありまして。鹿児島から熊本へ転勤するとき、実は結婚直後だったんですよ。そして、熊本で子どもが生まれた直後にも転勤の話が出てきました。できれば一ヶ所に留まりたいという妻の思いもあり、子どもや妻のことを考えると今の仕事を続けるのはどうなのだろうという疑問が湧いてきました。

また、実家のブドウ農園は兄が継いで、父母と一緒にやっていましたが、十数年後は両親も高齢で働けなくなるかもしれない。そうなると兄が一人になってしまう。今ならまだ自分も若いので、帰るなら今だと思いました。都農町なら親族もいるので子育てもしやすい。総合的な判断でしたね。
ーーそこから今は農園で広報を担当されていますね
 父や兄はブドウの栽培についてはすごいんですよ。長年やっているので、就農して2年の自分では敵わない。だけど、当時は誰もブドウの宣伝をしている人がいなかったんです。外部向けに、農園として公式アカウントをつくって宣伝をしようと。それでInstagramをはじめました。

表向き、Instagramをはじめた理由は宣伝ですが、実は自分のためにはじめたところもあります。農家って基本的に家族以外の交流がないんです。日常の作業も見方によっては地味かもしれない。だから農家の日常を外向けに発信すれば、反応してくださったりするので、自分の心の安定にもつながっています。それもありYouTubeチャンネルをはじめたり、ブドウTシャツをつくったりと、自分なりに楽しいと感じられることに挑戦しています。
ーーKAWANO農園のInstagramを見ていると、コメントがあったりフォロワーが多かったりと反応がうかがえます
 そうですね、Instagramを見て直売所や道の駅にいらしてる方もいるようです。欲をいえばもっとフォロワーさんが増えてほしい(笑)
ーーKAWANO農園のブドウは主にどこで販売しているんですか
 直売所、道の駅つの、産直おすず村の3つです。直売所が一番多いですね。シーズン中はたくさんお客さんが来てくださるので、1年のうちで一番農園が活気づいています。都農町外の方も結構いらっしゃるんですよ。お話をした方だと宮崎市内が多い印象ですが、遠方では鹿児島から来られた方もいます。町内には僕らのところだけではなく直売所がいくつかあるので、ブドウやフルーツが好きな方はそれらを回っているみたいですね。
ーー農家に生まれ、一度は別の仕事をして、ご実家の農園に就くようになった裕介さんにお聞きします。新たに就農しようと思う方々に対してアドバイスはありますか
 まったく農業をしたことがない方だと難しいかもしれませんが、自分が就農したときに、どんな働き方をしているか、どんなことに働きがいを感じるか、何を楽しいと感じるか、あらかじめ想像していたほうがいいですね。農業って9割はシンプルな作業の連続なので。

 僕自身は、幼いころ農業って地味でつまらないな、虫嫌いだからやりたくないなと思っていました。だけど、自分が年齢を重ねたこと、ほかの仕事の経験もあり、農業を昔とは違う側面で見ることができるようになったなと今では感じています。好きな音楽を聴きながら作業ができるし、自分で発信していく楽しさ、農業を伝えていく楽しさを日々感じています。今度、2人目の子どもが生まれるのですが、家族のためにも良いブドウをつくって稼いでいかなきゃなって思っています。
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