#暮らしのこと
写真が連れていく思いがけない場所
2021.09.11
フィルム・デジタルにかかわらずカメラを趣味にする人はたくさんいます。今やスマートフォンとSNSの時代、誰もが撮る・撮られる関係のなかにいる。たかが写真、されど写真。その世界にはまり込み生涯を写真に捧げる人も少なくありません。写真をきっかけにして新たな出会いが生まれ、想像しないところへたどり着く。都農町には、そんな経験を持つカメラマンがいました。
尾鈴山登山からはじまった写真人生
都農町の中心市街地にある岩本写真事務所。
記念・証明写真の撮影、出張撮影、ドローンによる空撮、画像のデジタル処理加工まで幅広いニーズに応えるまちの写真屋さん……なのですが、敷地内には木工細工の工房や創作料理のお店も構え、「いったい何屋さん!?」と疑問が湧きます。
事務所を営む岩本重喜さんは都農町を拠点にカメラマンとして国内外の撮影をし、地元を代表する尾鈴山の写真集を2冊刊行しています。

写真人生のはじまりは小学5年生のとき。尾鈴山へ登ったことがきっかけで山に魅せられ、中学生のときには山へ行くたびに写真を撮るように。高校生にもなると写真を手焼きプリントするほど熱中し、カメラマンとして生きていくことを考えるようになります。しかし、収入の得方がわからず、高校卒業後は延岡市内のデパートへ就職。その後レストランへ転職し、実績をあげたことで日向市に自分のお店を持ちました。お店を経営する立場になり支店も持つようになるなど多忙でしたが、それでも写真の勉強を欠かしたことはなく、地域のアマチュアカメラマンにも「アマチュア」ながら写真を教えていました。

多忙がたたったのか、結果的には体を壊し経営から離れることに。それが再度写真と向き合う機会となりました。
「なんでも屋」な写真事務所
「なんもせんべえって思っていたときに現像所から連絡がきて。カメラマンをちゃんとやろうと」。
転機とは予期せぬときにやってくるもの。当時、県北に新しい写真の現像所ができることになり、岩本さんに声がかかりました。その会社の契約社員となり、東京にある写真研究所と都農町とを往復する日々を過ごすようになります。本格的なフィルム現像の知識を習得し、コンピュータを使った写真の色合わせ、印画紙の調整といった仕事を行いました。

しかし、それ以外の仕事はほとんどなく空いた時間はカメラマンとして撮影に出かけるようになります。また、現像所に勤めていたころ、すでに岩本さんは結婚して子どももいました。都農の家にほとんどいない日が続くなかで、奥様から「そろそろ都農で落ち着いたらどうなの?写真屋でもしながら」といわれたことで踏ん切りがつき、自分の写真事務所を構えるに至ります。
ただ写真屋をするだけでは田舎では食べていけないだろう、そんな思いもあり最初は撮影や現像の仕事のほか、カメラの販売・修理も行っていたといいます。相談があればなんでもする。以前は職人を雇って看板制作も行っていました。また、収入を補うためかつての経験を生かし創作料理のお店もはじめるように。

「いつの間にかなんでも屋さんだね」。
仕事の依頼や相談に応えるたびに新しい機材を導入し、その知識と技術を培ってきた岩本さん。その仕事を信頼して何度も依頼をする会社もあります。成人式や学校の式典の撮影など、自分の生活するまちに写真を通して貢献するようになり、気づけば事務所を設立して40年以上が経っていました。
撮影が縁を結んだネパールとの交流
事務所を訪れると、至るところに東南アジアらしき風景や動物、ポートレートがあることに気づきます。
「ネパールにはもう20回以上撮影で行っててね。宮崎市内よりカトマンズ市内の方が詳しいくらいに」。

実は現在、岩本さんは公益社団法人日本ネパール協会の宮崎支部支部長を務めるほど、ネパールと深い関わりがあります。
岩本さんとネパールとの出会いは、1995年に宮崎大学主導で行われた「ダウラギリⅠ峰(いっぽう)登山隊」。撮影担当として参加したことがはじまりでした。本来であれば遠征後に帰国するはずのところ、岩本さんはネパールへ残り各地を撮影して回りました。ネパール各地に友人ができ、家族付き合いするほど親しい人も増え、そのなかには大学の学長やネパール政府の人までいたとか。別れ際には泣かれてしまうほどで「その場を治めるつもりで『またネパールに来るから』といったのがはじまり」と毎年訪れるようになりました。
世界遺産の写真をたくさん撮っていたことで、ネパール政府から写真の提供を依頼されたり、反対に岩本さんが宮崎でネパールの写真展を開催するときには後援書を発行してもらうなど、もはや個人の付き合いを超えた関係に。ちなみにネパール政府が個人へ後援書を発行しているのは岩本さんただ1人だけ。

2021年現在は新型コロナウイルス感染症のため、ネパールを訪れることができない状況。「ネパールへは撮影のために行ってるけれど、心が安らぐんだよね。いらない心配をしなくていいし、現地の人とも仲良くなれるからね。早く行ける日が待ち遠しいよ」。そう呟きながら、岩本さんはネパールでの撮影をもとにした写真集の編集に取り掛かるのでした。
【岩本写真事務所】
〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町南新町4787
営業時間:8:00〜17:00
定休日:日
TEL:0983-25-0596(FAX:0983-25-2467)
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