#食べる
石臼挽手打ちそばの世界は底知れず 尾鈴庵
2021.04.29
うどん文化の広がる宮崎県。お昼時にさっと食べるだけでなく、楽しくお酒を飲んだあとの締めの一品としても県民のあいだでは定着しています。それに対し「そば」はどうでしょうか。もちろん宮崎県内にもそばのお店はありますが、県民にとってはうどん文化ほど身近ではないかもしれません。しかし、本格的なおいしいそばを提供するお店は確かにあります。喉越しが良く、食したあとの満足感とまた食べたいという欲が湧き上がる。そんなそば屋さんをここ都農町で見つけました。
生涯をかけるに値するそばの世界
さる2020年5月。新型コロナウイルスの脅威に日本中が影響を受けているさなか、道の駅つののフードコート内に本格手打ちそばのお店「尾鈴庵」がオープンしました。都農町のソウルマウンテンである尾鈴山から名前を拝借したこのお店は、長年にわたり日本料理店で経験を積んだ店主がUターンを機に開きました。

その店主こと黒木賢二さんは都農町の出身。日本料理店に勤めるうちに、手打ちそばの魅力に取り憑かれ、その世界にどっぷりと浸かるように。いかにおいしいそばをつくり提供するか。そのこだわりと探究心はとどまることを知らず、「生涯をかけるに値する」と語るほど。そばの世界を深めていけばいくほど、その先の光景が見えていき、決して満足することがない。

そば打ちの技術をはじめ、素材や製粉方法など、そばをお客さんに届けるまでの要所要所でこだわりのポイントがあります。長年の経験はそのまま自信にもなっているようで「手前味噌にはなりますが全国にある道の駅のなかでも尾鈴庵のそばは高いレベルにあると思います。それだけおいしさには自信があります」と話します。
そばは「なまもの」
尾鈴庵のそばの特徴として喉越しの良さが挙げられます。私たちがよく口にするそばといえば、灰色で黒い斑点があり口の中でブツブツと切れていく食感のものが多いなか、尾鈴庵のそばは白く、その表面が綺麗で滑らか。そばをすすり、噛んで喉を通り抜けるまで、心地よい風味がずっと続きます。
一般的なそばと尾鈴庵のそばの違いはなんなのか。それは素材と製粉方法にあります。尾鈴庵では都農町産のそば「宮崎早生かおり(ミヤザキワセカオリ)」の玄そばを使用。玄そばとは、黒い殻を被ったままの実の状態のことで、その殻を脱皮機によってむく「丸抜き」という作業を通じ、完全に皮を除去した状態にします。これを石臼にかけて製粉していくのですが、ポイントは熱が加わらないように粉を挽くこと。
「熱を持ってしまうと粉が焼けて風味に大きく影響してしまうんです。ですので、できるだけ熱が加わらないよう細心の注意を払って粉づくりをします。石臼も蟻巣石という熱を持ちにくい素材でできたもの使い、ゆっくりとした回転で製粉していきます」。

そばの素となる粉づくりは、そのままおいしさに直結する重要な工程。原料とそれを活かす繊細な作業がそばの味を決めていくため「そばはですね、なまもの、お刺身と同じように扱うととらえていただければ」と語られていました。
そばを通じ地元の食材を知っていく
おいしいそばだけでなく、そこにおいしい天ぷらがあるとさらに嬉しい。その天ぷらが地元産の旬の食材であればなおさら。ということで、この日は「鱧天ざる」をいただきました。

日本料理の名店で腕を磨いた黒木さん。そこで培った調理技術からつくられる天ぷらは、衣の厚さがちょうど良く、サクサクとした歯応えに頬が緩みます。日向灘でとれた鱧(ハモ)を丁寧な包丁さばきで骨切りにし、裏ごしして冷やした衣に通してさっと揚げる。この鱧天、そのままでももちろんおいしいのですが、梅肉をつけて食べると酸味が鱧の風味と絶妙に混ざり合い、おすすめです。この鱧天ざるは昨年もお客さんに好評でした。毎朝自宅で手打ちされたそばと新鮮な食材の天ぷらの組み合わせに舌鼓を打つ。まだ食べてない方はぜひご賞味ください。
現在は新型コロナウイルスの逆風が吹くなかで苦戦を強いられる飲食店ですが、「ちゃんとおいしいものを提供すればお客さんはついてくるものと信じています」と前向きに語られます。「宮崎は本格的な手打ちそばを嗜む文化がないので広めていきたい。私のそばを通じて地元の食材の魅力や、都農町でもそばが生産されていることを伝えていきたいと思っています」。
【尾鈴庵】
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町川北5129 道の駅つの内
定休日:火(祝日の場合は営業)
TEL:090-3419-5183
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