#食べる
父が残してくれたもの 洋食店グリルポパイ
2021.04.26
道の駅つのから北へ国道10号線を真っ直ぐに進むと、左手に見えてくるモスグリーンの建物。ノスタルジックなたたずまいが印象的なここは、42年続く老舗洋食店さん「GRILL POPEYE(グリルポパイ)」。「都農町民なら知らない人はいない」であろうこのお店には老若男女問わず多くのお客さんが訪れます。
父のつくったお店で育つ
長い歴史を感じさせる店内にはジャズが流れ、洋食の香ばしい匂いが漂います。椅子に腰かけ、辺りを見渡して驚くのが客層の厚さ。世代や職業も違えど、それぞれが集い憩う場所。そんな憩いの場所はどのようにして生まれたのでしょうか。現在、二代目店主としてお店を切り盛りしている藤本七月(ふじもとなつき)さんにお話をうかがいました。

開業のきっかけは七月さんの父、正美(まさみ)さんでした。もともと料理に興味があった正美さんは、中学校を卒業してすぐに日向市の洋食店で働きはじめ、本格的な料理の道へ。長きに渡る下積みを経て22歳で独立し、現在の場所でお店をはじめました。当時はまだ国道10号線も通っていなかった砂利の土地。水道もなく、井戸を3回掘り起こし、水を引くところからのスタート。その様子を周囲の人々は「ここでお店をしても、お客さんが来ないんじゃないか?」と心配されていたそうです。

そんな苦労のスタートから2年が経ったころ、奥さんとなる妙美(たえみ)さんに出会い結婚し、夫婦でお店を営んできました。七月さんが産まれてから高校に入るまでお店が自宅を兼ねていたため、子どものころからお店の手伝いをしていたという七月さん。「小さいころからいろんな人とお話してきたので、おかげさまで人が大好きになりました」と語ります。しかしそんな七月さん、子どものころは父の正美さんに対して少し苦手意識があったのだそう。
父としての正美さんは亭主関白で昔でいうところの「昭和のお父さん」。言葉遣いを1つ間違えただけで延々と怒られることもしばしば。それでいて突拍子もなく、あと先考えず自分で決めたことを迷いなく突き進むので振り回されることもあったそうです。10代の七月さんはそんな父のことを好きになれず、高校を卒業したあと福岡の短期大学に進学。保育士の仕事を7年勤めたあとに都農町へ帰郷し再びお店を手伝うことに。親子3人でお店を切り盛りしていたのも束の間、七月さんに転機が訪れます。
父の想いとレシピの継承
それは突然のことでした。七月さんが戻ってきてほっとしたのか、正美さんが大病を患い、1年の余命宣告を受けます。
家族が心配するなか、お店に立ち続ける父の姿をみた七月さんはお店を受け継ぐことを決意。七月さんが手をつけたのはメニューのレシピ化でした。グリルポパイのメニューはどれも七月さんが産まれたときにはあるものでした。その味の決め手となるのはソース。チキン南蛮の甘酢やタルタルも、カツ丼のタレも、ハンバーグのソースも、それらすべてが正美さんの手づくりで、しかも目分量。その長年の経験で得た父の勘を残すためにレシピに書き起こすことにしました。

看病をしながらのレシピ化には、私たちには想像もつかないほどの苦労があったといいます。「父がつかむ調味料をすべてグラムを量って、ノートに書き起こす毎日でした。お店と看病を続けながらだったので大変でしたが、このとき頑張っていなければ今のお店はなかったと思います」と当時を振り返ります。
それから闘病生活3年が過ぎるころ、レシピを記したノートが完成しました。
この引き継ぎがあったおかげで、お店には今でも正美さんの「味」がメニューとして並びます。お昼になるとその味を求めてたくさんのお客さんが訪れます。新しく来てくれるお客さん、常連さんもいれば、20年ぶりに来てくださるお客さんや、昔アルバイトをしていたスタッフが食べに来てくれることもあるのだそう。そんな光景に七月さんは、正美さんが残してくれたものは、味やお店だけではないと感じたのだそうです。「こんなに多くのお客さんに愛された父は、とても偉大だったんだなと思いました、それも父の損得勘定で考えず、誰にでも分け隔てなく接する人柄にあったのかも知れません」と語ります。
受け継がれる「思いやり」
七月さん、実は取材の1ヶ月前に新たな家族が産まれました。産後1ヶ月が経ちますが、せっかく食べに来てくれるお客さんを大切にしたいとの思いから妙美さんや旦那さんと協力して今までと変わらずお店に立ち続けています。
また、子どもが産まれてはじめて親の目線になることができたという七月さん。現在は子ども向けに甘めのカレーを開発ができないかと考えているところ。正美さんが残してくれた味に七月さんの味が新たに加わる日も近いかもしれません。

最後に七月さんに、これから都農町に来られる方へ、メッセージをうかがいました。
「きっと県をまたいで環境が変われば、自分を取り巻くさまざまな文化も変わると思います、そこには戸惑いもあるかもしれないけれど、人を思いやるという人間の本質は変わらないと思うんです。でも都市部の時間の流れで生きていると、そんな大切なことを忘れてしまいそうになるときがあります。ぜひ都農町に来たら町の人たちの優しさに触れていろんなものを感じて欲しいです」。「人を思いやる」と言うこと、それは正美さんが大切にしてきたお客さんを喜ばせるサービス精神と似ていると感じました。もし、忙しくて大切な何かを忘れてしまいそうになったとき、思いやりがたくさんつまったグリルポパイで温かな食事と1杯のコーヒーでくつろぐひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

本日頂いたハンバーグドリア、たっぷりチーズにナスとこぶしサイズの肉厚ハンバーグ。熱々のまま頂くのがベスト
[DATA]
【GRILL POPEYE-グリルポパイ-】
〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町大字川北18836-1
営業時間:11:00~15:00、17:30~21:00
営業日:不定休 ※事前にお問い合わせください。
(Instagramにてgrillpopeyeで検索すると定休日をご確認できます)
お問い合わせ: 0983-25-1727
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