#仕事
陶芸と農業。どちらも大切なのはコミュニケーション
2021.01.29
生き方や働き方の多様化が見られる現代。「副業」や「復業」あるいはボランティア活動など1つの仕事にとらわれず、いくつもの肩書きや顔を持つ人も増えてきました。ここ、宮崎県都農町でもそんな方はいっぱいいるはず。そうして調べてみると、どうやら陶芸家・農家として働いている方がいるらしい。陶芸も農業も自然と向き合う仕事。そして、土に関わる仕事。何を常日頃考え、仕事をしているのでしょうか。
飾らない美学 尾鈴焼
JR日豊本線と並行する海沿いの道を、東都農駅に向かってまっすぐ進む。「目的地は左側です。お疲れさまでした」とナビゲーションが示す方向には煙突の立つ建物がありました。
この方は「陶房児玉」を主宰する児玉清明さん。陶芸家と農家の2つの顔を持って働いています。
陶房児玉では、都農町の象徴ともいえる尾鈴山の名を冠した「尾鈴焼」を作陶しています。自宅の車庫を改築した陶房にはガス式の焼窯が設置され、入り口にはこれまでにつくった作品が陳列されていました。華美な装飾のない落ち着いた雰囲気が心を穏やかにさせてくれます。「派手からず地味からず。飾らないところが尾鈴焼の特徴だと思っています。使う色も1色か2色ほどで。想像を膨らませながら、釉薬(ゆうやく)の配分も考えて今回は『この色』というのを決めていきますね」。
陶房児玉では、都農町の象徴ともいえる尾鈴山の名を冠した「尾鈴焼」を作陶しています。自宅の車庫を改築した陶房にはガス式の焼窯が設置され、入り口にはこれまでにつくった作品が陳列されていました。華美な装飾のない落ち着いた雰囲気が心を穏やかにさせてくれます。「派手からず地味からず。飾らないところが尾鈴焼の特徴だと思っています。使う色も1色か2色ほどで。想像を膨らませながら、釉薬(ゆうやく)の配分も考えて今回は『この色』というのを決めていきますね」。
児玉さんが陶芸の道へ進んだのは“たまたま”でした。
30代のころ「ちょっと遊びにこないか?」と宮崎市内の陶芸家に誘われ訪れたところ、そのまま陶房に就職することに。その陶房は「本部はにわ製作所」。宮崎の定番土産である「はにわ」の製作で有名な陶房です。「すごく興味があったわけではないんですよ。手に職つけるのもいいなと思って入ったんです。私が入ったころは、はにわをつくる従業員さんがおられて。はにわの製作のほかにも依頼されたオブジェもつくっていて、平和台公園やJA・AZMホールに設置したりしましたね」。
30代のころ「ちょっと遊びにこないか?」と宮崎市内の陶芸家に誘われ訪れたところ、そのまま陶房に就職することに。その陶房は「本部はにわ製作所」。宮崎の定番土産である「はにわ」の製作で有名な陶房です。「すごく興味があったわけではないんですよ。手に職つけるのもいいなと思って入ったんです。私が入ったころは、はにわをつくる従業員さんがおられて。はにわの製作のほかにも依頼されたオブジェもつくっていて、平和台公園やJA・AZMホールに設置したりしましたね」。
その後、自分の窯を持つに至ります。陶芸家としてはオーダー品の作陶や陶芸教室の講師をしています。焼窯の中には教室に参加した方々の作品がありました。
「ちょっと待っててくださいね」。
そういって奥から大きな焼き物を抱えてきました。そっと電気を消すと、ポワッと温かい光が陶房を照らします。「うわ! 綺麗だ……」思わず声をあげると児玉さんの表情に笑みが浮かびました。「焼き物の下に美々津産の和紙を入れて、内側の電球で照らしているんですよ。この焼き物はパーツごとにつくって重ねていくんです。ろくろを回転させながら少しずつ。ヒビが入りやすいのでつくるのが大変なんですよ。滅多に表に出さないんですが今日は特別にね」。焼き物といえば「器」をイメージしてしまいがちですが、このような職人の仕事と技の光る作品もあるのですね。
「ちょっと待っててくださいね」。
そういって奥から大きな焼き物を抱えてきました。そっと電気を消すと、ポワッと温かい光が陶房を照らします。「うわ! 綺麗だ……」思わず声をあげると児玉さんの表情に笑みが浮かびました。「焼き物の下に美々津産の和紙を入れて、内側の電球で照らしているんですよ。この焼き物はパーツごとにつくって重ねていくんです。ろくろを回転させながら少しずつ。ヒビが入りやすいのでつくるのが大変なんですよ。滅多に表に出さないんですが今日は特別にね」。焼き物といえば「器」をイメージしてしまいがちですが、このような職人の仕事と技の光る作品もあるのですね。
興味本位で手にしたコリンキー
児玉さんは陶房を主宰するほか、農家としての一面も持っています。
黄色いかぼちゃの「コリンキー」をはじめ、千切り大根、獅子唐、ネギなどを栽培。自然や食べる人のことを考え、減農薬で育てています。児玉さんの野菜は道の駅つの、ディスカウントストア、そしてオンラインマルシェである「ポケットマルシェ」でも販売され、都農町だけでなく全国へ届けられています。
黄色いかぼちゃの「コリンキー」をはじめ、千切り大根、獅子唐、ネギなどを栽培。自然や食べる人のことを考え、減農薬で育てています。児玉さんの野菜は道の駅つの、ディスカウントストア、そしてオンラインマルシェである「ポケットマルシェ」でも販売され、都農町だけでなく全国へ届けられています。
陶芸に続いて農業をはじめるきっかけとはなんだったのでしょうか。
うかがってみると、それもまた“たまたま”と話します。「大分県へ陶器の販売に行ったときのことだったんです。たまたま果物屋に寄って、そこにあったコリンキーに興味を惹かれて買ってみたんですよ。名前が変わっていておもしろくてね。そのときに、これだったら自分もできるかなあって思ったのがきっかけでした」。そしてコリンキーでは物足りなくなり、現在のような栽培品種となりました。農業をはじめて以来、力を入れていたコリンキーにいたっては栽培を教えて欲しいと畑へ見学に来られるほど。「たくさんできましたよー! って電話がきたときは嬉しかったです」。
うかがってみると、それもまた“たまたま”と話します。「大分県へ陶器の販売に行ったときのことだったんです。たまたま果物屋に寄って、そこにあったコリンキーに興味を惹かれて買ってみたんですよ。名前が変わっていておもしろくてね。そのときに、これだったら自分もできるかなあって思ったのがきっかけでした」。そしてコリンキーでは物足りなくなり、現在のような栽培品種となりました。農業をはじめて以来、力を入れていたコリンキーにいたっては栽培を教えて欲しいと畑へ見学に来られるほど。「たくさんできましたよー! って電話がきたときは嬉しかったです」。
農業をすることで同じつくり手や消費者とつながる機会が増えたことにやりがいを感じつつ「どっちが本職かわからなくなるときがあって困るなあ」と笑ってもいました。
陶芸と農業に共通する思い
「どういうわけか知らないけれど、陶芸も農業も土に縁がありましたね」。
陶芸と農業、どちらも土を使うものであり、直に「つくっているもの」と向き合う仕事。
何か共通するものがあるのではないか。
「共通点ってあると思うんですよね。器をつくるにしても、まず乗せるものがないとはじまりませんから。土を扱うということを除いても、器と食は関係が深い。そして、あまり科学(化学)に囚われないことですね。器をつくるときに使う釉薬の量や、野菜をつくるときの農薬の量だったり」。
陶芸と農業、どちらも土を使うものであり、直に「つくっているもの」と向き合う仕事。
何か共通するものがあるのではないか。
「共通点ってあると思うんですよね。器をつくるにしても、まず乗せるものがないとはじまりませんから。土を扱うということを除いても、器と食は関係が深い。そして、あまり科学(化学)に囚われないことですね。器をつくるときに使う釉薬の量や、野菜をつくるときの農薬の量だったり」。
また、仕事をするうえで心がけていることもあるといいます。
「陶器も野菜づくりも、買ってくれる相手を大事にすることですよね。買ってくれたらそれで終わりじゃなくって、その後もコミュニケーションをとっていく。自分の手を離れたあとに知らないふりじゃいけないと思ってます。するかしないかでお客さんとの関係がまったく違うものになりますし、思いを伝えたり、話を聞いたりするのは大事ですよ」。
その甲斐もあって児玉さんの野菜をリピートして買う方も。また、新しいことをはじめようとするとき、周りに協力者も現れるとか。
「陶器も野菜づくりも、買ってくれる相手を大事にすることですよね。買ってくれたらそれで終わりじゃなくって、その後もコミュニケーションをとっていく。自分の手を離れたあとに知らないふりじゃいけないと思ってます。するかしないかでお客さんとの関係がまったく違うものになりますし、思いを伝えたり、話を聞いたりするのは大事ですよ」。
その甲斐もあって児玉さんの野菜をリピートして買う方も。また、新しいことをはじめようとするとき、周りに協力者も現れるとか。
思いっきり目立つようなことしない。しかし、仕事やその先にある相手と誠実に向き合うことで、確かに人の心をつかんでいる。それは今も昔もこれからも、変わらない大切なことなのかもしれません。
[DATA]
【尾鈴焼 陶房児玉】
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町大字川北16302-2
TEL:0983-25-1335(携帯:090-3196-3264)
都農町の移住に関するお問い合わせはこちらへどうぞ。
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【尾鈴焼 陶房児玉】
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町大字川北16302-2
TEL:0983-25-1335(携帯:090-3196-3264)
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