#食べる
本場関西の味と居心地の良い空間を求めて
2021.03.10
都農郵便局の真向かい、新しくてきれいで、どこか趣ある店構えのお好み焼き屋さん「集(つどい)」。
サービス精神旺盛な、石田弥三郎さん・栄子さんご夫婦が提供する本場関西の味を求めて、子どもから大人までたくさんの人が訪れます。開店から8年経ち、すっかり都農になじんでいるこのお店、実はとっても異例な経緯で開業に至っていました。
生活が「劇的」に変わったきっかけはあの人気番組
現在の自宅兼店舗がある場所は、もともと栄子さんの実家があった場所。
昔ながらの造りで、以前お父さんが営んでいたという自転車屋の跡がそのまま残り、長い土間続きで冬は寒く、トイレも外。普通に暮らすだけでも不便な家で、栄子さんの姉・幸子さんは、長年高齢のお母さんと大病を患う妹さんのお世話をしていました。
当時、兵庫県神戸市で暮らしていた栄子さんは、病院に入院したお母さんのお見舞いで帰省した時のことをこう振り返ります。
「病室で母と2人きりになったときに、普段家のことについて何も話さない母がぽつりと『幸子がよくしてくれている』と言ったんです。それを聞いて、今まで姉が家のことを一身に背負い、がんばってくれていたんだと感じました。同時に、母は苦労している姉のことを心配したまま亡くなるのかと。それで、母がいよいよというときに『母ちゃん、これからは私が姉ちゃんの側にいるから心配するな』と約束したんです」。
お母さんが亡くなり、一周忌に帰ってきた時、改めて家の状態を見て「両親が残してくれたこの家をきれいで住みやすい家にして、姉を側で支えてあげたい。姉を心配しながら亡くなった母を安心させたい」と強く思ったのだそうです。
しかし、神戸での生活は長く、仕事も持ち家もあるし、親しい人だってたくさんいる。それに、神戸で生まれ育ったご主人を地元から引き離し、全く知らない都農の地に連れて行くのは迷いがあり、すぐに決断できるものではありませんでした。
そこである賭けに出た栄子さん。それは、問題を抱える家を匠がリフォームする人気番組「大改造‼️劇的ビフォーアフター」に応募すること。もしも採用されて、みんなで住めるようにリフォームしてもらえたら、都農に帰る運命だったんだと受け入れようと思ったそうです。
すると応募して1週間ほどでテレビ局から連絡が。詳しい家の状況説明や打ち合わせを重ね、あれよあれよという間に番組出演が決定。それを機に、夫婦2人で神戸の仕事を辞め、持ち家も売り払い都農に引っ越す決意をしました。
都農に引っ越してから仕事をどうしようと考えたときに、家庭料理としてよくつくっていたお好み焼きでなら商売できるかもと、リフォームの際に店舗も併設。こうして、都農町での石田さん夫婦の新しい生活がはじまりました。
食材の質とボリュームは惜しまない
人気番組の効果は大きく、放送された翌日にはさっそく県外からお客さんが訪れたのだとか。「番組の最後に、完成した店の中で姉たちにお好み焼きをつくって振る舞うというシーンが流れたんです。それを見て来てくれたんでしょうね。でも家の鍵の引き渡しは放送日の翌日だったので、私たちまだ住んでもなかったんですよ。しばらくゆっくりするつもりが、慌てて開店に向けての準備を進めました」。
その間も訪れるお客さんを断りつつ、なんと引っ越しから2週間で「てっぱんお好み焼 集(つどい)」を開店。
(宮崎あるあるですが、肝心の宮崎でその放送が流れたのは半年後の話…)。
食材の買い出しと生地づくりは栄子さん、食材のカットと調理は弥三郎さんが担当。食材のほとんどは、町内で調達した新鮮なものを使用しています。
人気メニューは定番の「豚玉」と、「牛スジコン玉」。「豚玉」に使う豚バラは塊で仕入れ、精肉店で肉の解体・加工を行っていた弥三郎さんが絶妙な厚さにカット。甘辛く味付けた牛スジとコンニャクがたっぷり入った「牛スジコン玉」は、柔らかい中にも牛スジの食感を残すため、手間ひま掛けて煮込みます。
軽やかなヘラさばきで生地をまとめながら、豪快に具材を乗せていく弥三郎さん。それを見た栄子さんは「これを夏場もやるんだから。夏にネギとかキャベツを見つけてくるの大変なのに〜」と言いながらも、お客さんが喜んでくれるからいっかと明るく笑います。
出来上がったお好み焼きは、ボリューム満点なのに、軽くてふんわりした生地なのでペロッと完食。お好み焼き以外にも、焼きそば、焼うどん、神戸牛のサーロインステーキなどの鉄板料理が味わえます。
みんなが「集う」場所
子どものころ、自宅に父親の知り合いが集まってきては、お酒を飲んで酔っ払っている姿が嫌で、開店当初は「絶対にお酒の提供はしない」と言っていた栄子さん。しかし、香ばしい香りに濃厚なソースがたっぷりかかったお好み焼きを食べていると襲ってくる黄色いシュワシュワの誘惑…。お客さんの声もあり、じゃあビールだけと提供をはじめたら、いつの間にか壁の棚にはお客さんがキープしたたくさんの焼酎ボトルが並ぶまでに。
それは趣味のゴルフに毎週出掛けるご主人が、「反省会(という名の飲み会)」好きの都農町民にまんまと懐柔されたせいでもありました。「神戸の人はね、コンペ後にゴルフ場でちょっとした会食はしても、場所を変えてまでグダグダ飲むことはありません。でも、こっちの人はそこからの反省会が本番でしょう? 最初はそういう習慣がないから主人も参加していませんでしたが、あるときコンペで優勝して。『優勝したらこんといかんわ〜』と仲間に言われて参加してみたらもうやみつきよ」。と話す栄子さんの横で、ニコニコしている弥三郎さん。今では栄子さんよりも都農になじみ、ゴルフ仲間が店に訪れては反省会を開いているそう。
お店には大人だけでなくかわいいお客さんも。子ども用で、お好み焼きのハーフサイズ330円にドリンクをサービスで付けているので、おこづかいをにぎって子どもだけで食べに来ることもあるのだとか。
お酒を飲んでちょっと長居してしまうのも、子どもが立ち寄りやすいのも、2人の人柄のおかげ。何度でも通いたくなる、居心地の良い空間がそこにはありました。

[DATA]
【てっぱんお好み焼 集(つどい)】
TEL.0983-25-2316
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町大字川北4587番地1
営業時間:11:00〜19:00 ※19時以降は予約対応
定休日:火曜・水曜(臨時休業あり)
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