#子育て情報
家庭教育で変わる町、変わる人 
2022.03.30
『家庭教育』と聞くとどんなことを想像しますか? 子どもが生きるなかでの基礎的な資質や能力を親子で育む「家族間の教育」といったイメージが一般的かもしれません。しかし、家族のそれぞれが抱える課題も違えば、答えも違うもの。それらを気軽に打ち明けることが難しい時代になった昨今、家庭教育の在り方について悩みを抱える保護者がたくさんいます。
宮崎県都農町には、そんな保護者をサポートするために、学校・家庭・地域をつなげ、支援の輪を広げようと尽力する人々がいます。
家庭教育を都農町に。2人の挑戦
2019年に都農町は宮崎県の「みやざき家庭教育サポート推進事業」のモデル地区として指定を受けました。事業は主に、ワークショップを用いた保護者同士の交流のきっかけづくりや、地域との触れ合いの場を創出することに重きが置かれています。

「僕は、いわゆる『風の人』なんだと思います。だけどちょっと風を吹かすだけじゃダメなんです、それがきちんと継続していかないと意味がない。」

都農町で活動した3年間を「風」にたとえて語るのは、都農町教育委員会の山之口忍さん。県教委として着任後、サポート推進事業を軸に「家庭教育」への意識向上と、保護者が安心して子育てに取り組むことができる環境づくりを続けてきました。

そんな山之口さんと一緒に3年間を振り返るのは「NPO法人 都農enjoyスポーツクラブ」理事長の河野仁志さん。総合運動公園の指定管理を行うとともにスポーツクラブの運営を行ってきた地域の顔役の1人。教育長の紹介により出会った2人は互いに子どもを持つ保護者同士でもあり、サポート事業を進めるなかで支え合ってきた「戦友」でもあります。そんな2人が立ち上げたのが「家庭教育応援団『さん・さん』」です。河野さんが自ら人選したというメンバーには保護司や、PTAの面々が集い、保護者と子どもたちの意見がフィードバックできる体制が整えられています。
家庭教育を通して生まれたつながり
さんさんではこれまで、保護者を対象にした学習会や、親子での交流活動を積極的に行ってきました。そのなかでも就学時健康診断と同タイミングで行う学習会では、県の家庭教育サポートプログラム(以下略:サポプロ)を活用しています。参加した保護者からは「入学前にほかの保護者と友だちになれて良かった」と評判が寄せられます。こうした取り組みには「保護者との距離感」に重きを置く山之口さんたちの姿勢が表れています。

「学習会といっても、講師を招いた座学を行うのではなく、保護者に4人1チームを組んでもらって普段のお子さんとの接し方を語ってもらうんです。学習会の目的は、家庭教育の問題に対する直接的な解決ではなく、日ごろの悩みを相談しあって子育てのヒントを得ることにあるんです。」
また、さん・さんでは保護者が学習する環境を整備する一方で、親子間の交流や地域とのつながりづくりにも力を入れています。なかでも親子交流行事の「さん・さん門松」は地域の講師とボランティアが集まった一大イベントとなりました。考案者の河野さんもこの行事が活動の3年間で一番思い出に残っているといいます。

「コロナが少し落ち着いた時期に開催できたこともあって、90人もの親子連れが参加してくれたんです。子どもたちよりも大人のほうが真剣になって盛り上がっていました(笑)。分担して作業を進めることで、親子で話すきっかけにもなりますし、親からは『子どもの成長を垣間見ることができて嬉しかった』、子どもたちからは『楽しかった』という声が聞けました」。
つづいて行く家庭教育支援への取り組み
2022年の2月、さん•さんはその活動が評価され、文部科学大臣賞を受賞しました。
活動の集大成ともいえる嬉しいニュースに、河野さんに感謝を述べる山之口さん。また、3年計画で進められてきた本事業は来年度より町単独での活動継続が決まりました。これにより、山之口さんは県教育委員会に戻ることとなります。都農町を離れる寂しさはありつつも、これからの展望に期待を込めます。

「3年間で変わったことはたくさんありますが、まだまだ継続していかないと変わらないこともたくさんあります。僕は去ることになりますが、都農には河野さんたちがいる。事業はこれからどんどんグレードアップしていきますよ。」

対して河野さんも、自身が「家庭教育を通して変わること」を体感してきたといい、来年度の活動に自信を覗かせます。

「実は一番変わったのは自分自身なんです。活動をするなかで保護者同士のコミュニケーションもできるようになりましたし、子どもへの話し方や接し方を考えることが多くなりました。僕を含めたくさんの人が変わりつつあると思います。来年度はさん・さんのメンバーを増やして、活動を盛り上げていくことで今まで以上に家庭教育に対する意識が高まればいいなと思います」。

都農町に家庭教育を根づかせるために二人三脚で歩んできた3年間。
山之口さんと河野さんの行く道は分かれていきますが、互いに子育てに対する思いが変わることはありません。今はこれまでの活動をたたえ合い、思い出話に花を咲かせています。
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