#暮らしのこと
Enjoy your life. 挫折はいつだってチャンスになる
2022.08.12
ふと自分のこれまでの生活に目を向けてみると、さまざまな人が網の目のように関わっていることに気づきます。人は一人では生きられないという言葉が真実であるように、いつだって誰かに助けられながら生活している。ちょっとしたご縁がその後の人生に大きく影響することだって。今回の主人公、山内和彦さんはまさに縁によって生かされてきた方でした。
自分は本当に運がいい
ハツラツとした笑顔で迎えてくれたのは整体業「俉縁(ごえん)」を営む山内和彦さん。屋号に使われた「俉(ゴ)」という漢字には「出会う」という意味があります。

「自分は本当に運がいいと思っています。これまでの人生、人のご縁で生かされてきた自負がある。『人と出会う縁』ということで屋号に表現してみました」。
和彦さんは都農町で生まれ育ち、宮崎市内の高校卒業後は福岡県の医療専門学校で柔道整復師の資格を取得。その後、宮崎市の整骨院で働き出します。充実した毎日を過ごしていましたが、生来思い悩みやすい和彦さんはあることで壁にぶつかり退社。それからは飲食店のアルバイトを掛け持ちして暮らしていました。漫然と日々が過ぎていくなか転機が訪れます。

昼間に働いていた飲食店のスタッフは、かつてオーストラリアで日本食レストランを経営していました。就職活動が上手くいかず落ち込んでいる和彦さんに対して、スタッフたちは毎日のように「オーストラリアに行ってきなよ!」と声をかけていたそう。

「陽気な職場だったこともあり、毎日聞かされていると行けるんじゃないか!? と自信が湧いてくるというか、素敵な勘違いが起きるんです。すぐに行くことに決めましたよ」。

ただただ運が良かったと当時を振り返りますが、このオーストラリア行きは和彦さんに多くのものをもたらしました。
Enjoy your life, Enjoy my Life.
ワーキングホリデー制度を活用し2019年1月にオーストラリアへ旅立ちます。滞在場所は大陸の南西端にあるマーガレット・リバー。ワインの産地として有名なまちです。和彦さんがこの土地を選んだ理由はお酒が好きだから。海外で働くのなら自分の好きなことを仕事にしたい。自分はお酒が好きだ。オーストラリアで有名なお酒はワインだ。そうしてワインの材料となるブドウを栽培する農場で働くこととなりました。

遠い国での生活は、言葉から習慣まで苦労の絶えない日々。とくに言葉の壁は一番ストレスのかかるものでした。

「滞在1年目は聞くことも話すことも思い通りにいかない。話すたびに『ちょっと待って!』と日本語を口にするものだから、周りのみんなが『ちょっと待って』を覚えていくという(笑)。英語にある程度慣れてきてからも、細かい感情表現ができないことが苦しかったですね」。
言葉に難はあるものの、働きぶりが評価されブドウ畑では技術指導員を任されるようになります。仕事を掛け持ちしていたこともあり、収入の面でも環境の面でもマーガレット・リバーの生活は居心地の良いものでしたが、反面、コミュニケーションの面で自分の感情を伝えられないという居心地の悪さも抱え続けていました。

滞在から2年以上が経ち、日本へ帰りたい気持ちとオーストラリアに残りたい気持ちの両方が渦巻くなか、同僚のある言葉が和彦さんを突き動かしました。

「『Enjoy your life, Enjoy my Life(人生を楽しんで)』とレストランのインド人シェフにいわれたんです。その言葉に救われました。次があるから大丈夫だって。オーストラリアは移民の国だからみんな優しい。ホストファミリーだって英語の話せない日本人をよく滞在させたなと(笑)。滞在中は新型コロナもあって、ヘイトにあったり一時的に仕事がなかったりしましたが周りのみんなに助けられました」。
すべての挫折は、すべて糧となる
2021年5月に帰国し都農町へ帰ってきた和彦さん。当初はマーガレット・リバーでの経験から都農ワイナリーのブドウ畑で働いていました。その後、現在の整体業へと仕事を移していくのですが、そのきっかけは些細なことでした。

「あるときボランティアのつもりで腰の曲がったおばあちゃんの整体をしたのですが、回復具合がすごくて。それも嬉しかったけれど、おばあちゃんが『お金を受け取ってくれないと私もすっきりしないから』と謝礼を払ってくれたんです。最初は戸惑いましたが、お金ってエネルギーの交換だなってそのとき思ったんですよ。お互いの気持ちを伝え合うといいますか。それに、お金をいただくことでお互いの立場が対等になると。本気でやろうと屋号をつけて仕事にしました」。

オーストラリア時代は自分の好きなことを仕事にしていましたが、都農町へ帰ってからは「求められること」を仕事にするようになります。気持ちの変化について尋ねると「折り合いがつくようになった」という答えが。

「今まで好奇心の行き着くことをやっていたら、その都度向き合わなければいけない課題に直面していました。そのたびに悩み、もがいていたら周りの人たちが助けてくれましたし、勝手に次のステージへ行き着いていたんです。その積み重ねがあり、『今』になっている。いろんな挫折を経験しましたが振り返るとすべて糧になっていますね」。

人の縁が一巡して戻ってくる。それを運の良さと捉える和彦さん。都農町での暮らしは和彦さんにどんな縁をもたらしていくのでしょうか。
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