#食べる
ラッキーな私たちが育てたハッピーなお野菜はいかが?
2022.04.28
愛情を込めて野菜を育てる農家さん、という表現がぴったりな方々と出会いました。「おいしさ」に貪欲で、食べたい野菜をどんどん試す。野菜の声に耳を澄ませ、快適な環境づくりに精を出す。「土に触れていることは楽しい」と朗らかに話すその姿にこちらも元気をもらう。太陽にも負けないくらい気持ちの良いお2人にお話をうかがいました。
親子2人 + 看板猫2匹で営む農園
4月初旬の快晴日。カラッとした太陽の下うかがったのは「しろハピ農園」。国道10号線沿いにある住宅に到着すると農園を営む山下成子さんと娘の真季さんがお出迎え。
左から山下成子さん、真季さん
しろハピ農園ではスナップエンドウやそら豆を中心に、にんじん、さつまいも、トマトなど多品種の野菜を栽培しています。道の駅つの、産直おすず村、Aコープ都農店といった周辺店舗での販売のほか、ポケットマルシェを介したネット販売も行っています。

農園のはじまりは遡ること成子さんの父の代より。もともときゅうり農家をしていたお父様は作業中の大怪我により農業を続けることが困難となりました。その当時、佐賀県で家族と暮らしていた成子さんは、この知らせを聞いて都農町へ帰郷。以来、お母様の手伝いをすることから農業に関わるようになりました。その後、お母様も病気で他界されますが、両親が残してきた畑を守りたいという思いから農家として生きていくことを決心。そこに娘の真季さんも加わったことで、現在のしろハピ農園は誕生しました。

「しろハピ」というユニークな名前に目を引かれますが、これは真季さんが命名。農園の看板猫だった「しろ」と「ハッピー」の名前から拝借したもの(しろは2021年7月に他界。同年9月に新猫「ゴードン」が仲間入りしました)。一度見聞きしたら覚えてしまうその名前、そして2021年に行ったクラウドファンディングの効果もあり、今では首都圏を中心として全国各地でしろハピ農園の野菜が食べられています。
私たちはラッキー! 支援してくれる人々の存在
農家の仕事は野菜の栽培・収穫・出荷にとどまらず、畑やビニールハウスの手入れまで幅広い。それを2人でこなさなければならない。大変な苦労をされていることは想像に難くないのですが、2人はそれほど心配していないご様子。

「良縁に恵まれているのよ。助けが欲しいタイミングで必ず誰かが現れてくれるの」と成子さん。
栽培や機械のことがわからなければ先輩農家が駆けつけ、土運びなど人手が必要になれば地元サッカークラブの選手が駆けつける。同業者だけでなく、ご近所も含めた地域のみんなが助けてくれる。

そんな関係はどうやって築いてきたのでしょうか。

「出荷先で出会う農家さんは経験豊富で熟練された方が多くて、その方たちから見れば私って孫のような存在なんです。みんな『この子は私の隠し孫』なんて冗談いって可愛がってくれる。その方たちがしろハピ農園のことをほかの方々へ紹介してくれるんです」。
そうしたつながりは地元を越えて広がっています。
県外の実家へ帰省するのでお野菜を一緒に持って行きたい、マルシェに出店するときに一緒にお野菜を販売したい。そんな周りの人の手によって野菜たちが運ばれ、遠い土地でも知られていく。
また、著名な料理家である今井真実さんとのコラボ企画以降、今井さんのファン層を含めた県外からの注文が増えるように。なかにはリピート注文する方も。

「私たちラッキーだよね! 運だけで生きているかも(笑)」。
「そうそう、こちらからお願いするだけじゃなくて、向こうからやってきてくれるの」。

成子さんと真季さんが地道に蒔いてきた種が、今は「運」としてすくすく育っているようです。
まだ知らぬ「おいしい」を求めて
農家だからこそ知っている野菜のおいしい食べ方があるのではないか。そう尋ねると「そら豆のワタががおいしいよ! 食べてみる!?」と実演していただけることになりました。

サヤのついたそら豆を、そのまま網の上で焼いていきます。両面にこんがり焼き色がつき、いい香りがしてきたところでサヤを剥いていく。通常ならここで豆の部分だけ取り出して食べますが、実はその豆が寝転んでいる「ワタ」がおいしい。とろとろとしたワタをスプーンで掬い取り、口に入れた瞬間の甘さときたら。
「私も農家になって知らない『おいしい』があるってことに気づいたの。一言に『おいしい』なんていっても、その中身は多彩で奥深いよね。誰もが幼いころからいろんな『おいしい』に出会えるといいと思うの。私も農業の経験を積むことで、おいしくつくることに近づいていきたい」。
そんな成子さんは農業の魅力を「ゴールがないこと」と話します。

「10代のころ植物の意思が知りたいと思ってた。根を張って、この場所でずっと生き続ける彼らがしてほしいことはなんだろうって。その思いは農業をするうえでも大切にしています。頑張って野菜をつくっているのはこの子たちだから。私たちはお野菜たちが快適にお仕事できるように努めるだけ。どれだけ時間がかかっても、失敗をしても、少しずつ理想に近づくといいな」。
【しろハピ農園】
道の駅つの、産直おすず村、Aコープ都農店、ポケットマルシェを中心に販売。
最新情報はInstagramより。
Instagram:@shirohapifattoria
▼ポケットマルシェ|しろハピ農園▼
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