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「ここにしかない」価値の磨き方。道の駅と歩んだ10年
2024.12.27
都農町の発信拠点である「道の駅つの」。2013年7月31日のオープン以来、1年間に約70万人の来場者が訪れ、売上高は年間約5億円と町の活性化に大いに貢献しています。2024年6月には来場者が700万人を突破するなど、設立から10年を経ても勢いに陰りが見えることはありません。その秘訣とはいかに。
口蹄疫を乗り越えて。都農町の玄関口でお出迎え
道の駅つのは、2010年に発生し都農町に大きな被害をもたらした口蹄疫からの復興、地域経済の活性化を目的につくられました。都農町商工会・尾鈴農業協同組合(現宮崎県農業協同組合 尾鈴地区本部)・都農町漁業協同組合の共同出資によって設立された株式会社都農まちおこし屋によって運営されています。

施設は物産館のある門前市場、情報休憩コーナー、一之宮交流館(貸会議室)の3つに分かれ、寄り合いどころとして自由に過ごすことができます。また、防災機能を備えているため大災害など非常時には防災拠点として活用されます。
物産館では都農・川南地域の地場産品が並び、飲食スペースでは地元食材を使った料理が提供されるなど、「ここでしか味わえない」魅力が勢揃い。名産であるトマトを使った「トマトソフトクリーム」は若者を中心に人気があり、SNSをきっかけにわざわざ県外から食べに来る人がいるほど。
オープン以来人気があり、道の駅つのでしか買うことのできないお土産品「トマトひねり揚げ」に至っては年間6万袋以上を売り上げています。

「道の駅は都農町の玄関口ですから、お客様を明るくお迎えする場所。まちの特色やおもしろさ、季節感を楽しみながらお買い物をしていただきたいです」

駅長の松山聡さんの言葉の通り、入口のドアが開いた先には、彩り豊かな季節の果物、推しの特産品が即座に目に入ります。その光景に出会ったら、お財布の紐が緩むことは間違いなし。
困難を乗り越えた立ち上げ期。開業1ヶ月で10万人を記録
(写真提供:道の駅つの)
松山さんは道の駅立ち上げに関わった中心メンバーの1人。鹿児島県で生まれ育ち、福岡県で小売業のサラリーマンをしていた松山さんは、いかにして都農町へやってきたのでしょうか。

30代中盤を迎え、新しいことに挑戦したいと思っていたところ、道の駅つのの立ち上げの求人を見つけます。「手づくり感のあるゼロからの立ち上げ」に強い関心があったため迷わず応募。採用され、オープンの1年前に当たる2012年9月に都農町へやってきました。

「当時の都農町は本当に疲弊していました。しかし、諦めムードは漂っていなかった。どうにかしないといけない! という若い人たちがたくさんいて僕も感化されましたね。10年経った今、都農町のキーマンとして活躍している人ばかりです」

立ち上げは困難の連続でした。もともと、道の駅の構想は町民の意思が賛成・反対の真っ二つに割れていたこともあり、批判的な声も少なくありませんでした。出荷者を募る集会を開いても予想の300人を大きく下回り、60人程度しか集まらない。

「棚に並ぶ物が集まるのか、お客さんが来るのか、不安で仕方がありませんでした」
いざ、オープンを迎えると不安をよそに大賑わい。1ヶ月も経たないうちに来場者は10万人を記録。2014年になると、東九州自動車道の都農-日向間が開通したことが追い風となり100万人を突破。

道の駅の意義を認める人も増え、出荷希望者が集うようになりました。今では350人ほどの出荷者による商品が物産館に彩りを与えています。
パイプ役に徹する。出荷者と消費者の良き関係性をつくる
オープン時から変わらず人気スポットとなっている道の駅つの。その秘訣にはいくつか理由があると松山さんは分析します。

「立ち上げ時から『目的地化』しないことを念頭に置き、『絶対に立ち寄ってもらえる場所』を目指しています。道の駅に来て終わりではなく、ここを玄関として都農町を回遊してほしいんです」

その試みとしてまず、トイレを徹底的に綺麗に保つことに力を入れました。個人利用者だけでなくツアーで立ち寄る観光バスのあいだでも評判が広がり、定着に寄与したといいます。
「出荷者さんの存在も大きいですね。出荷者さんにファンがついて、野菜や果物を買いに来るリピーターさんがたくさんいます。出荷者のみなさんは、遊び心や挑戦心のある前向きな方ばかりで、道の駅におもしろさを与えてくださいます」

2020年からコロナ禍が襲来。大型連休や年末年始など40日程度の休業を余儀なくされたものの、お中元やお歳暮となる商品、また日常使いの生鮮品を扱っていたことで赤字にはならなかったといいます。
最近では地場産品の魅力をより生かすため、つの未来財団や地元農家と一緒に加工品を開発。「農の都を愉しむ」シリーズとして2024年4月には「生姜の佃煮」の販売が開始されました。

「出荷者さんとお客さんをつなぐパイプ役だと思って仕事をしています。10年暮らしていると愛着が湧きますし、みんなに都農のことを知ってもらいたい。若者世代の誘客など課題はありますが、心強い町のみなさんと一緒ですから大丈夫でしょう」
【道の駅つの】
〒889-1201 宮崎県児湯郡都農町大字川北5129
営業時間:9:00〜18:00(門前市場)
     10:30〜15:00(フードコート/ラストオーダ14:30)
     年中無休
TEL:0983-25-5055
Instagram:@michinoeki_tsuno
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