#仕事#暮らしのこと
犬も人も良きパートナーであるために
2023.08.25
古代より人と犬はパートナーとして共生してきました。狩猟や牧畜のサポートなど人間が生活するうえで必要な役割を犬が担い、その関係性も時代とともに変化していきました。

現代ではペットとして飼われることが一般的です。犬が家族や社会の一員として一生を全うするということは、人とのあいだで嬉しいことも悲しいことも起きることを意味します。「飼う人も飼わない人も、双方が犬のことを理解できると、犬も人もより良い関係が築ける」とあるドッグトレーナーは力説していました。

人間社会のなかで犬がより良く生きていくために必要なこととは。
公認訓練士による本格的ドッグトレーニングクラブの誕生
2022年3月、都農町にドッグトレーニングクラブが誕生しました。まち中心部に近く、背景には山々の見える心地良い場所。その開けた空間にはハードルやスラロームなどの障害物が見えます。

ここ「ドッグスクールYURI」は犬のしつけやアジリティーレッスンのほか、出張・預かり訓練を行っています。運営しているのは都農町出身の黒木由梨さん。由梨さんは福岡市の専門学校でドッグトレーナーの勉学に励んだあと、同市内の訓練所に約6年勤務。ドッグトレーニングの技能を身につけ、並行して(一社)ジャパンケネルクラブ公認の訓練士資格を取得後、満を持して地元都農町での開業に至りました。
幼いころより犬のいる環境で育った由梨さん。ドッグトレーナーに興味を抱くようになるのも自然な流れでした。テレビで特集されていた盲導犬や介助犬。その訓練の様子に興味が湧き次第に意識するように。高校生のとき都農町で開催されたアジリティー(犬の障害物競争)のイベントにも影響され、進路も固まっていきました。決定打になったのは専門学校生のとき。

「授業のなかでドッグスポーツやアジリティーの実演があったのですが、もう本当におもしろかったんですよ。一緒に息を合わせて競技に臨んだときの達成感は格別。体を動かすのが好きだからワンちゃんと一緒にスポーツするのは楽しいなって」

それ以来、トレーナーとしての道を歩みはじめるのでした。
「しつけ」の大切さ。犬が人間社会で生きていくということの意味
アジリティーは犬と主導する人がぴったり呼吸を合わせるドッグスポーツ。お互いの関係性がそのまま犬の動きに表れます。信頼関係を築くには普段から「しつけ」が重要となりますが、しつけは実生活上で大きな意味を持つといいます。
「しつけは犬の命を守るために行うものなんです。決して飼い主のエゴを押し付けるためではなく。ワンちゃんたちが人間社会で生きていくにはルールを教えることが必要。ワンちゃんにも得意・不得意な場面や状況があります。ストレスのかかる環境に置かれたとき、ちゃんとしつけされているかどうかはワンちゃんの負担に大きく影響します」

精神的にも負荷が大きいと、吠える・喧嘩腰になるといった問題行動として表面化することも。それら行為自体をやめさせても解決にはならず、背景にある根本原因を突き止めないと改善には至らないといいます。

「いかに前兆に気づくかですよね。私たちトレーナーは犬の動き方や表情など細かい反応を見ながら訓練を行なっています。犬の1年は人間と違いかなり大きいので小さな変化を見逃さず早めに改善させていく。『なぜ、してはいけないのか』という理由や意味を言葉で伝えることができませんから、毎日少しずつ『動き』を習慣づけていきます」
人と同じように犬にもそれぞれ個性があり、トレーニング方法も一匹ごとに異なる。訓練の様子からわかることを元に飼い主へアドバイスする。犬と人、その双方とコミュニケーションを取り、お互いの意思疎通を図る由梨さんの仕事はまるで同時通訳者のようでもあります。
地域ぐるみで犬を理解しよう
犬を飼うということは命を預かるということ。飼い主には、彼らが家族の一員として、また社会で生きていくための一切を引き受ける責任があります。

「飼う前にいったん立ち止まって考えられるといいですよね。本当に飼えるのか、ちゃんとしつけできるのか。ただ癒されたいがために飼うのは命を軽んじている気もします。飼いたいなと思ったとき身近な詳しい人に相談できると理想的ですね」
飼う・飼わないにかかわらず犬を飼うことへの理解が広まるといい。困ったときに気軽に相談できるトレーナーが地域にいると安心できる。由梨さんが地元で開業を決めた理由にはそんな背景もありました。

「飼っている人も飼っていない人も含めて地域ぐるみで犬のことを理解できると事故や問題は減っていきます。問題行動の原因をつくっているのは人なので。接し方やしつけ・訓練の大切さを知っていれば犬の命を守ることにつながり、犬も人も良好な関係を築くことができます。日本は海外のペット先進国に比べるとまだまだ知識が普及しておらず、環境も整っていません。この地域からでも少しずつ状況を変えていきたいですね」
開業から1年以上経ち、預かり訓練を行う犬も増えてきました。犬たちの由梨さんを見つめる目は穏やかで、何かを期待しつつ自制心がある。そんな、お互いの信頼を感じることのできる場面が目の前にはありました。
【ドッグスクールYURI】
宮崎県児湯郡都農町川北5578
TEL:080-8450-6559
Instagram:@dogschool_yuri
お問合せはDM、TELより
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