#仕事
未来を再生するエネルギーを都農町から広げる
2023.07.21
自分の地元に、時代の先端を行く仕事をしている人々がいるとしたら。憧れを感じ、まちの見え方も変わってくることでしょう。都市も田舎も関係なく、その土地ならではの環境や文脈を活かした“先端”の仕事がある。自然豊かな人口1万人の小さなまちだからこそ可能な仕事の形。そこで汗を流す大人たちはかっこいい。
カーボンニュートラルな次世代燃料「木質ペレット」
気候変動、エネルギー危機など私たちの暮らしに直結している環境問題。石油・石炭といった化石燃料はその有限性から枯渇が叫ばれ、同時に温室効果ガスの排出も問題となっています。昨今では原油高の高騰も続き、日々の仕事や暮らしにも大きな影響が出ています。

そんな状況下、都農町では2021年9月に「ゼロカーボンタウン」宣言を出しました。この宣言は町と子どもたちの未来のため、2050年までに二酸化炭素排出の実質ゼロを目指すもの。実現に向けて「再生可能エネルギーによる電力の地産地消」「農業における温室効果ガス排出量を削減する取り組み」など7本の柱を掲げ、施策に動いています。

そうした動きのなかで代替エネルギーとして注目されているのが「木質ペレット」。

木質ペレットは木材に粉砕・乾燥を施し、円筒状に成型したバイオマス燃料(エネルギーや物質に再生が可能な動植物由来の資源)の一種。同じ原料の薪と比べて軽量で燃焼効率が高いのが特徴です。

原料の供給先として地域の製材所から出た廃材を活用。化石燃料と異なり輸送にかかるコストや二酸化炭素の削減が可能など、エネルギーの地産地消を実現させることができます。
木質ペレットの原料となる木材はまず粉砕し、おが粉になる
おが粉は熱風により水分を蒸発させる。その後成型され木質ペレットが完成する
都農町にはこの木質ペレットを専門に製造・販売する都農ペレット工業株式会社があります。

2015年3月に創業した同社を率いるのは代表取締役の河野章弘さん。章弘さんが木質ペレットに関心を抱いたのは15年ほど前に遡ります。当時は原油価格の高騰により、施設園芸で使用される暖房機の燃料費がますます経営を逼迫させてしまうと、数名の施設園芸農家が立ち上がりました。

都農町や筑波大学の教授たちと世界情勢に左右されない地産地消燃料の木質ペレットの検討を開始。都農ワイナリーの空き地でペレット製造試験機を仮設して実験を行いました。同時に、農家の方々を中心にバイオマス研究会も発足。章弘さんは周囲の後押しを受け、会社を設立しました。
開業倒産の危機。地道な営業活動が実を結ぶ
ところが、創業早々に経営危機を迎えます。それまで高騰していた原油の価格が暴落。さらに2015年ごろから木材価格が高騰するという逆転現象が起こります。

「売り先の見込みがあった状態からのどんでん返し。眠れない日々が続きましたね。でも悩んでいても仕方ない。頭を切り替えてとにかく営業と販路開拓に動いていました」
過去にコンクリート製造プラントで技師として働いた経験をもとに、創業時より自社製ペレットのデータ収集を実施。品質管理を徹底させることで高品質な製品を供給できる環境を整えていきました。そのペレットを積んで九州圏内の燃焼機器メーカーや販売代理店を回る日々。なんと半年で2万キロも車を走らせるほどの移動距離。

「九州が庭と思えるほど近くなりましたね(笑)」とあらゆる場所を訪れた結果、自社商品である「ドラゴンペレット」の売り先は年々拡大。メーカーだけでなく暖房機を導入しているホテルやペンション、また、コロナ禍を契機としたステイホームやキャンプ需要もあり一般にも購買層は広がっています。今では九州・宮崎でお馴染みの“あの”ホームセンターにも置かれるほど。
倉庫には「ドラゴンペレット」の名前の由来となった龍がいる
「いい加減にやっていると絶対に売れないと思って普及活動にはとことん力を入れました。もし当初から順風満帆だったら油断していたはず。今があるのは半年で2万キロ走った、必死にもがいたあのときがあったからです」
打つ手は無限。広がる木質ペレットの可能性
木質ペレットが持つ可能性は広がりを見せています。非常時や災害時、電気の供給がストップしてもコードレスな暖房機があれば暖が取れ、炊き出しを行うこともできます。最近では木質ペレットに対応したサウナも開発されるようになりました。

都農ペレット工業では「猫砂ドラペレ」やアロマ製品「檜エッセンシャルオイル」など、ペレット製造や廃材処理の技術を活かした商品を開発。木質ペレットの未だ発見されていない用途を探求しています。最近では都農町で毎月行われている「みちくさ市」に参加。地域の人々に五感で木質ペレットの魅力を体感してほしいと、ペレットピザ窯、ペレットプールを設置し好評を得ています。

「かつて知人からいただいた『打つ手は無限』という言葉を大切にしています。なんでも試してみる。今はドラゴンペレットで全国ナンバーワンを目指すべくJASマーク認証に動いています。そして、働く人たちが満足できる環境を整える。それができて私もやっと一人前。まだ0.6人前です。従業員が心地良く働けて、その環境から生まれた製品が地域を良くしていくならなおさら嬉しいですね」
【都農ペレット工業株式会社】
〒889-1201
宮崎県児湯郡都農町大字川北15164-1
TEL:0983-21-2557
FAX:0982-21-2558
TOP TOP