#暮らしのこと
パラシュートのように、心をいつもオープンに
2022.12.26
「オープンマインドが一番ね。オープンマインドは本当に必要」。そうはっきりと口にしていたことが印象的でした。ハワイで生まれ育ち、異国であった日本で暮らす彼女が放った言葉だからこその説得力。話を聞いていると、これまで暮らしたどの土地の思い出も、当時のことを楽しそうに話していました。「都農町はハワイと似ているから大好きよ」。2022年で都農町生活も12年。本人もまさかこんなに都農にいるとは思っていなかったでしょう。都農で暮らすハワイアン女性のライフストーリー。
箱入り娘の日本暮らし
ティール・ミエ・イマダさんは日系4世のハワイアン。都農町ではALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手)や英会話講師として働いています。

ハワイで生まれ育ち、23歳のときに初来日。観光で訪れた東京ではよく迷子になったといいますが、そこで出会う人々に親切にされ、それが強く記憶に残っていました。

人も土地も文化も、なんて日本は素敵なんだろう。そう思ったティールさんはJETプログラムという海外青年を日本に招く人的交流プログラムを活用し、日本文化を肌で味わうためALTとして長期滞在することを決意します。JETプログラムは選考が厳しいといわれるなか、二度目の挑戦で無事合格。勤務希望地として千葉・熊本・宮崎の3つを選んだ結果、初任地として宮崎県の日向市へ行くことが決まりました。

「ハワイでは箱入り娘だった私が、日本で暮らすだなんて。日本語も話せないまま来日したんだから」。
最初の3年は厳しかったと当時を振り返るティールさん。現在のようにスマートフォンをはじめとした手軽な翻訳機器もなかったため、コミュニケーションをとるのも一苦労。外見から日本語で話しかけられることもしょっちゅう。

「でも、みんな優しかったよ。どこも1人で行くのは難しかったけれど助けてもらえました。言葉が通じなくても大丈夫って思いましたね。困ったらとにかくヘルプ! ということ。あとはジェスチャーとスマイルね!」。
ティール流の日本文化の学び方
まったく環境の異なる海外での生活。周りに母国の人がいないと孤独を感じてしまうとはよく聞くところですが、ティールさんの場合はどうだったのでしょう。

「もちろん寂しかったよ。ほかのALTの人たちもそうだったかもしれない。だから週末になるとALTや海外の人たちがバーに集まって交流しているの。そこでみんな友だちになったりするのだけど、私は絶対に参加しなかった。だって、同じアメリカ人の友だちをつくりたければアメリカにいたままのほうがいいわ。私は日本人の友だちをつくりたかったし、日本の文化を学びたかったから。日本の人と遊んだほうが日本語は覚えられるしね」。
当時は海外の人に英語で話しかけられても「すみません、私日本人です」と返していたほどストイック。日本の友人が増えていくことで当初の寂しさも和らいでいきました。

「私、日本の人と気が合うわ。おそらく日本のルーツを持っているからだと思う。日本にいるとね、自然と話し方や考え方が日本人になってくるの。でもね、ハワイに帰ると物事の主張がはっきりしていてアメリカ人の『私』になるの。おもしろいよね。だから今の私は猫を被っているよ(笑)」。

日本での生活に慣れ、ALTとしてさまざまな学校で教えたあと、知人の誘いを受けて都農町へ移ることとなりました。それは2010年4月のこと。2004年に宮崎県へやってきてから6年の歳月が経っていました。
パラシュートのように、心をいつもオープンに
「ハワイと同じようにカントリーなところが好き。海が見えるし食べ物はおいしいし。楽しいね、本当に」。

都農町を一望できるコスモス畑で、感慨深げに話すティールさん。都農町に住みはじめてからはALTの仕事を行いつつ、地域のイベントにも関わるようになりました。イースターやハロウィンといったハワイ・アメリカの生活文化のなかで親しみのある行事を、地域の人々の協力を得ながら開催。子どもたちが楽しんでいる姿が、自分の幼いハワイ時代を思い出させ、懐かしさと楽しさに包まれたといいます。

都農町のいろんな催しに行くと必ずといっていいほどティールさんの姿を見かけますが、それについて「いろんな人と出会えるから」と話します。
「いろんな背景を持った人に会えるでしょ? 心が広がるし勉強になるの。もし、ずっと同じ人たちとだけ交流していると考え方が狭くなる。私はそれが苦手なんです。私が海外へ行きたくなる理由もそこにありますね。世界は広くていろんな人がいる。ずっと同じ場所に居続ける人生はつまらないから。言葉が通じなくても大丈夫よ。ヘルプ、ジェスチャー、スマイルよ。私だって日本へ来て何度『ヘルプ・ミー!』といったことか」。
常にオープンマインドで居続けること。それはティールさんが17年日本で暮らすなかで大切にしていること。いつかはほかの土地でも暮らしてみたいと話しますが、まだまだ都農町でやりたいことがいっぱいあるようです。

「英語にこんなことわざがあるの。“Your mind is like a parachute.Useful only one open.”パラシュートとマインド(心・気持ち)をかけているのだけど、パラシュートは閉じて使っても意味がないでしょ? それと同じでマインドも閉じていたらダメ。いつもオープンマインドでいると日々を楽しく過ごせますよ」。
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